家具メーカーが自動車内装品にかかわっているのはなぜなのか:天童木工突撃取材!(2)

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この記事では…

天童木工がバイオマスプラスチックに関わる原点となった、同社の自動車内装品事業について話を聞きました。⁠

(執筆:小林由美/facet)


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⁠著名デザイナーと共に名作家具を次々と生み出してきた天童木工。前回は、同社が参画する改質リグニン研究や、その成果となるバイオマスプラスチックやFRPについて取り上げた。今回は、バイオマスプラスチックに関わる原点となった、同社の自動車内装品事業について話を聞いた。
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天童木工 製造部 技術課 課長 中田 一浩氏


⁠――天童木工といえば、やはり家具のイメージが一番強いかと思います。自動車内装品に関わり出したのは社歴において途中からとのことですが、その経緯について教えてください。
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⁠中田氏:
本田技研工業(ホンダ)の初代「レジェンド」(1987年発売)の内装パネル製造からスタートしました。ホンダが開発中の自動車内装のパネルに本木を使用するにあたり、国内有数の家具メーカー数社に声をかけていて、「対応できない」という回答ばかりだったそうです。その中で天童木工にも声がかかりました。当社としても自動車内装の製造の経験はなかったのですが、いただいた縁を大事に、「(お客さまからの依頼は)基本的に断らない」といったことが職場文化としてあったこともあり、ご相談を受けた内容の課題をどうにか克服して実現しようということになりました。
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⁠――本木の内装パネル製作では、取り組み当初にどのような課題があったのでしょうか。
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⁠中田氏:
家具や室内装飾品の製造を主体としていたので、まずは「自動車内装品としての品質をどう作り込むか」が課題となりました。例えば家具は室内で使用することが前提であるため、使用環境の温度は低くてもせいぜいマイナス10度くらい、高くても40度くらいが一般的かと思います。一方、自動車は、屋外で使用するもので、降雪している環境や、直射日光にさらされることなどを考慮しなければならないことから、マイナス30度から100度くらいまで堪え得ることが要求されます。そうした厳しい要求事項に対応できる塗装技術や接着技術に対応した製造法を確立する必要がありました。また単品~小ロット生産が中心の当社の家具とは異なる、大量生産の生産ラインをどのように設計するかも課題となりました。これまでの業務対応が大きく異なることから、事業部門体制としても家具と自動車部門に分かれることになりました。

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⁠天童木工が手掛けた木製化粧板の付いた自動車内装の例
⁠左:アルミ基材本杢加飾コンソールパネル 右:樹脂基材本杢加飾コンソールパネル


⁠⁠中田氏:
この内装パネルでは、アルミ基材に対して、厚さ0.2ミリの木製の突板を被せています。まずは、このような金属と木との異素材接着と加飾の手法の模索から行っています。複雑な曲面形状においても、剥れたり、割れたりといったことがないようにしなくてはならないわけですが、それまでの成形合板で培った成形技術と職人の知恵を駆使して克服しています。3代目のレジェンドでは樹脂(ポリカ(PC)ABS)基材に対する加飾に変更されています。
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ゼブラウッドの採用例


⁠中田氏:
この事例では、ゼブラウッドを採用していますが、ホンダの意向で縞模様が極力平行になるようになっています。人工の柄ではなく天然由来の柄であるため、材料の確保をどうするかが課題となりました。さらに、鏡面仕上げをしたパネルでは、蛍光灯の反射具合もゆがみのない美しいラインで見えるようにとのことで、塗料の塗り方などの厳格な品質管理が求められました。
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⁠――展示されている自動車部品の加飾事例は、ぱっと見では、印刷されたシートが貼ってあるようにしか見えないですよね。
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⁠中田氏:
自動車メーカーからの依頼はどんどん高度になっています。まるでボールのような曲率を持つ複雑な形状をした基材に薄い合板をぴったりと這わせ、美しく仕上げるようなことが求められています。そうした技術で、天童木工ならではの差別化が図れていると思います。また、印刷技術は素晴らしく向上していますが、本杢にしか演出できない本物の風合いや表情があり、それらを最大限に生かすことを大切にしています。
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インサート成形の例:量産の部分ウッドステアリング同様の樹脂と突板によるインサート成形品。シワや割れがなく、現行工法同等に端部のRエンドまでしっかりと貼り込める。


⁠――自動車内装で培った技術は、家具でも生きていますか?
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⁠中田氏:
自動車内装の経験により、より高品質な製品づくりや、耐候性を必要とする屋外向けの家具や建材に対応可能になりました。⁠


⁠⁠家具部門と自動車部門の人材について
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⁠――家具部門と自動車部門のエンジニア(職人)との部門間交流や人材回遊などはあるのですか?
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⁠中田氏:
「規格や作業標準、納期に基づいた作業をする」自動車と、「顧客の個別リクエストにも試行錯誤しながら柔軟に対応する」家具と、スキルセットが大きく異なります。自動車内装も試作時は職人の知恵と経験に基づくアイデアを使う家具のような作業になりますが、量産する際は標準化や自動化をしていきます。このように業務内容が大きく異なり、また要求品質も異なることから2部門間であまり交流はなく、人材もそれぞれの部門で固定されています。⁠自動車部門として入社すれば、退職するまでずっとということが基本です。家具の担当が自動車に異動するケースはあることにはありましたが、異動後にかなり集中的に教育が行われています。
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――自動車部門を志望して入社してくるケースは結構あるのですか?
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⁠中田氏:天童木工が自動車内装にかかわっていることは世間一般であまり知られていないこともあり、志望してくる人は少ないです。ホンダのレジェンドのようにTendoのロゴを出すのはレアケースで、天童木工がかかわっているということを公表しないことがほとんどだからでしょうね。
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⁠――天童木工の仕事は、AIが高度に発達した未来ではどうなっていくと考えますか?
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⁠中田氏:
将来、AIがいかに高度化しようとも、天童木工の職人の手仕事は絶対に残るのではないですかね。私が日ごろお世話になっている大学の先生も言っていたのですが、未知とされてきたさまざまな現象が将来、科学的に次々と解明されていくのだとしても、AIによる業務支援が入ってくるなどあったとしても、縄文時代から続いている「人の感性や感覚を使った」ものづくりは細部などで残り続けると思います。
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⁠――将来は、人とロボットによる共同作業で、人だけでは作れないようなユニークなデザインの家具や自動車部品が生まれてくるかもしれませんね。
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3次元立体成形技術によるウッドステアリング


⁠最終回は、約80年の天童木工の歴史を紐解きながら、同社のものづくりによる国の課題解決への取り組みについて話していただく。
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>>>>連載「天童木工突撃取材」一覧

ライター、編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験。後、大手メディアの編集記者として約12年間、技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。2020年5月に個人事業 facetとして独立。