【PlaBase新年展望2026】(後編)注目の市場は防衛分野か、 ますます広がる高機能材料の活躍の場

毎年恒例となった、PlaBase運営のキーマン3人による「PlaBase新年展望」では、前年の市場や自分たちの足下の活動を振り返りつつ、今年の技術展望やチャレンジについて語ります。

前編も見てね!
中央:金森洋平(金森社長):PlaBase運営元である老舗化学商社・金森産業を取りまとめる経営者。
左:高瀬正明(高瀬常務):試作サービス「PlaQuick」事業の責任者。 長年にわたりものづくりの現場とかかわってきた。
右:松本祐介(松本編集長):PlaBase、Cheamtels、シーエムシー出版のメディア統括。国内外各地を飛び回る化学商社マン。
前編では、記事ランキングから見えた現場ニーズや生成AI時代のメディアの役割、英語版始動の手応えを総括し、欧州と中国の動向を踏まえてPlaBaseの進むべき方向を探りました。
後編では、2026年に注目すべき市場テーマについて取り上げます。防衛・宇宙分野と高機能材料PEEKの可能性や自動車業界の揺り戻しがもたらす影響などについて話しました。さらに深刻化する中小製造業の承継問題にも向き合い、日本のものづくりをどう未来へつなぐかを議論します。
注目キーワードは「防衛」と「PEEK」
金森社長: 2026年のテーマとして、私は「防衛」に注目しています。防衛予算も増えていますし、プラスチック業界にとってもここは市場になり得るんじゃないかなと。
松本編集長: 具体的にはどういう用途になると考えますか?

金森社長
金森社長: 例えば「ステルス性」ですよね。金属だとレーダーに映りやすいですけど、樹脂なら電波を透過したり吸収したりしやすい。あとはドローンとか装備品の軽量化ですね。ここでキーになる素材が、例えばスーパーエンプラの「PEEK」かなと思っています。
高瀬常務: PEEKは、物性は優れていているんですけど、成形が難しいですよね。成形温度もすごく高いし。だからこそ、我々がやっている試作サービスの「PlaQuick」と、最新の3Dプリンタの組み合わせが活きると思っています。 特に注目しているのが、スイスの NematX、日本のグーテンベルクの3Dプリンタですね。これらは、スーパーエンプラを使用できるので、試作段階で本番に近い物性が出せる可能性が有ると思います。これらは、射出成形用のペレットやパウダーをそのまま使えるので、試作段階で本番に近い物性が出せるんです。
松本編集長: 展示会の取材中では、「宇宙グレード」という言葉を聞きました。何かそういう規格があるわけではなく、マーケティングのキャッチだと思いますけど。PEEKやLCPといった高機能素材を、どうやって加工して防衛や宇宙分野に持っていくか。ここは2026年で、PlaBaseとしても深掘りしていきたいテーマであります。
試験片の作成代行も行っております。
松本編集長:PlaQuickの方では、何か新しいチャレンジはありますか?

高瀬常務
高瀬常務: 最近、「試験片(ダンベル)」の作成代行を始めたんですよ。材料メーカーが新しいグレードの樹脂を開発した時、その物性を測るために、必ず試験片を作るときに認定工場に依頼したりしますが、これを短納期で対応させて頂いています。
金森社長: それがネックで、新しい材料の提案スピードが落ちてしまうこともあるんですよね。
高瀬常務: そうなんです。それをPlaQuickの簡易金型技術を使えば、納期は「2週間」、費用は「数十万円」で提供できますよ、と。
松本編集長: 期間は半分、コストに至っては桁が1つ違いますね(笑)。

対応している試験片の形状 出典:PlaQuick
高瀬常務: これは「PlaQuick」のの得意とするスピード感だと思うのですが、
これ、普通はお客様(成形品を買う人)向けのサービスなんですが仕入先である材料メーカーさん向けのお手伝いにでもなってくれならとも思います。「このグレードの試験片、急ぎで欲しいんだけど!」というニッチな、でも切実なニーズに応えるものです。
金森社長: 我々は商社ですから、お客様はもちろんですが、仕入先メーカーさんの開発支援ができるというのも、非常に意味あるチャレンジだと思います。
自動車業界の「揺り戻し」が生んだ安心感

松本編集長
松本編集長: ここのところで、EV一辺倒からエンジン車への回帰が見られています(関連リンク:自動車業界2025年振り返り&2026年展望――エンジン車の方がお好き?)。
高瀬常務: 確かに、ハイブリッドが見直されて、EVのトーンが少し落ち着いた感じがします。もちろん、将来的にはEVなんでしょうけど、今は全方位でやっていくような現実路線になってきていますね。
金森社長: 経営者視点で見ると、これはポジティブなニュースだと思っています。まず、「いつガソリン車が禁止になるか分からない」という不透明感がなくなったのが大きい。「ハイブリッドやPHEVもしばらくは続くんだ」となれば、メーカーさんもエンジン部品への投資を続けられますから。「なんとしてもEVじゃないといけない」という不安から解放されて、「トータルで環境にいいのはどれか?」を冷静に選べるようになったのかなと思います。
日本の優れたものづくり技術をどう継承するか
松本編集長: 最後に、これだけは話しておきたいというテーマはありますか?
金森社長: やはり「日本のものづくりの承継」ですね。これは本当に深刻です。 大手化学メーカーさんもプラントを集約したりしていますけど、それ以上に中小の製造業の現場が、あまり良い状況ではありません。後継者がいなくて、技術はあるのに廃業せざるを得ない会社が増えています。「3社に2社は後継者がいない」なんて話もあります。
高瀬常務: 現場でも、廃業の話はよく聞きますね。今まで日本のサプライチェーンを支えてきた基盤が、崩れていくような危機感があります。
金森社長: だからこそ、ただ手をこまねいているだけじゃなくて、何とかソフトランディングさせたい。M&Aもそうですが、技術やノウハウをどうやって次の世代、あるいは別の会社につないでいくか。PlaBaseが技術情報を発信し続けることもそうですし、姉妹サイト「Chematels」でやっているようなスタートアップ企業の紹介なども、広い意味では「技術のアーカイブ」であり、次世代への継承活動だと思っています。

松本編集長: おっしゃる通りです。2025年に、PlaBaseで『水野の射出成形実験ノート「この材料打ってみたら、こうなった」』を企画したのも、そういう意図がありました。「人と技術をつなぐ」という原点に立ち返って、2026年も現場の役に立つ情報を発信していきたいです。
金森社長:読者の皆さん、2026年もPlaBaseをよろしくお願いします!
これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。

