自動車用途プラスチックの第一人者が見た、「人とくるまのテクノロジー展 2026YOKOHAMA」は? 今回はプラスチック部品の効果的活用による、車室内空間の「光演出」に注目!
加飾は動的演出へ:人テク横浜取材から(2)

この記事について
(執筆:高原 忠良/Tech―T)
2026年5月27日~29日、パシフィコ横浜にて「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)が開催された。 筆者は、自動車関連プラスチックの視点から、3日間にわたり現地取材を実施した。
前回は同展示会で見た、新型レクサスESにおけるプラスチックの高度活用事例について紹介した。今回はプラスチック部品の効果的活用による、車室内空間の「光演出」について報告する。
室内におけるアンビエントライトの活用はすでに広く普及している。RGBで調色可能なLEDの採用により、動的な色変化の演出が可能となっており、運転状況や音楽に連動した変化などの実装事例も増加している。
これらの光演出技術について、技術的側面から整理する。
基本的にはLEDの発光を利用し、その光をアクリルやポリカーボネート製の成形品、あるいは光ファイバーを介して伝達・拡散している。単に導光するだけでなく、車室内に向けて効率的に出射させる工夫が求められ、この点が樹脂成形技術や光ファイバー加工における重要な要素となる。
具体的には、樹脂表面に梨地状シボを付与して光を拡散させる手法や、プリズム状の形状を付加して出射方向を制御する手法が用いられる。加工の最適化が重要であり、拡散が強すぎる場合には光源近傍が過度に明るくなる一方、末端側で光量が減衰し暗くなるといった不均一発光の課題が生じる。
従来は導光パネル自体を視認させる、いわゆる直接照明が主流であったが、近年は間接照明へと移行している。さらに、これまで主流であった線状発光に加え、ドアパネル表面などの二次元領域全体を発光させる「面発光」への展開が進んでいる。
今回の展示から、具体事例を紹介する。
まず、前回取り上げたトヨタ紡織による新型レクサスESのドアトリムに採用された面発光である。裏面からの照明により、点灯時と非点灯時(昼夜)で異なる意匠表現が可能となる。色彩や発光位置も動的に変化できる点が特徴である(写真1)。写真のQRコードを通じてぜひ映像でもご確認いただきたい。

写真1 ドアトリムの面発光(トヨタ紡織)
次に、アクリル光ファイバーを活用した事例である。光ファイバーを「繊維」として織り込んだ布をドアトリムの一部に適用することで、布としての触感とともに面発光演出が可能となり、意匠性と商品性を向上させる。使用例としては、東レの「レイテラ」(写真2)および三菱ケミカルの「エスカ」(写真3)が挙げられ、いずれも複数車種で採用実績を有する。QRコードから展示では両製品のデモがご覧いただける。

写真2 東レ「レイテラ」

写真3 三菱ケミカル「エスカ」
続いて、開発・提案段階の事例を紹介する。
積水化学工業は、従来よりスパッタリングによる金属調薄膜表皮の「AURORADE」を提案している。今回の展示では、これに間接照明を組み合わせたドアモックを提示していた。金属調表皮がLEDの色調変化に応じて動的に変化する様子は、先進的かつ未来的な意匠表現を実現していた。また、モック左部では表皮上への動的投影による演出も組み込まれていた。

写真4 積水化学工業
イクヨオートモーティブは、透明成形品の裏面にインクジェットによる多色加飾を施す技術を提案している。今回の展示では、パネル端部に複数のRGB LEDを配置することで、パネル全体が動的に発光するデモンストレーションを行っていた。(写真5)インクジェット加飾はフィルムインサートに比べ生産性では劣るものの、専用の成形設備や治具を必要とせず、材料歩留まりが高い点が特徴である。説明によれば、数千台規模以下の生産ではコスト優位性を持つとされる。

写真5 イクヨオートモーティブ
以上のように、車室内の光演出は、直接照明から間接照明へ、さらには線状から面発光へと進化している。加えて、色彩の動的変化と組み合わせることで、意匠価値の向上のみならず車格表現の一要素としての重要性も高まっていることが確認された。
次回は、地球環境対応とプラスチック部品の高品位化を両立する視点からレポートする予定である。
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プロフィール

高原忠良(たかはら・ただよし)
2020 年にTech―T設立。
「現地現物」の精神で部品分解調査や、中国・東南アジア現地取材をもとに、⾃動⾞産業の将来動向まで多領域で情報発信中。
プラスチックや樹脂部品生産や材料の生産・開発に携わる自動車用途プラスチックの第一人者。
1980 年、山形大学理学部卒。2008 年、山形大学理工学研究科卒(工学博士)。
1980~1989 年、新日本無線(現:日清紡マイクロデバイス)。
1989~2012 年、トヨタ自動車。
2012~2018 年、サムスンSDIなどグローバル企業で勤務。
2017-2025年、埼玉工業大学 客員教授など産学両分野で活躍。
セミナー・メーカー支援・中国視察ツアー・日経クロステックへの寄稿など幅広く活躍中。ホームページでも各種調査情報を元に、記事や動画を多数掲載
https://www.tech-t.jp/

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