自動車用途プラスチックの第一人者が見た、「人とくるまのテクノロジー展 2026YOKOHAMA」は? 今回はプラスチック部品の効果的活用による、車室内空間の「光演出」に注目!
カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー:人テク2026横浜取材から(3)

この記事について
(執筆:高原 忠良/Tech―T)
2026年5月27日~29日、パシフィコ横浜にて「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)が開催された。 筆者は、自動車関連プラスチックの視点から、3日間にわたり現地取材を実施した。
前回は、プラスチック部品の効果的活用と、車室内空間における「光演出」技術について報告した。今回は、地球温暖化防止と循環経済への対応に焦点を当て、人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMAで見られた各社の取り組みを紹介する。会場では、循環経済、モノマテリアル、易解体性、植物由来材料といったキーワードを軸とした展示が目立った。
まず、地球環境対応と高品位な外観を両立させた事例を2件紹介する。
ホンダは、二輪車のタンク両サイドに採用した新開発の高品位パネルを紹介していた。三菱ケミカルのバイオ由来樹脂「デュラビオ」を用いて射出成形した透明パネルは、高い透明性と耐傷性を備える。その内側にグラビア印刷を施すことで、従来にない高品位な意匠を持つ外装パネルを実現し、すでに「モンキー125」に展開済みである(写真1)。植物由来樹脂を用いながら、高級感のある外観を実現した点が注目される。

写真1 Monkey 125 タンクサイドパネルに展開済み(バイオ由来樹脂DURABIO(透明)の裏面にグラビア印刷)
もう1件は、キヤノンジャパンによる型内塗装(インモールドコーティング)用の成形システムである。国内で初めてインモールド塗装が採用された車載部品は、レクサスLMのピラーとされ、内浜化成と日本ペイント・オートモーティブコーティングの協業による開発品である。型内塗装は、成形と同時に塗装層を形成できるため、後工程の塗装ラインが不要となり、塗装乾燥時のエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量の削減にもつながる。さらには、塗料使用量や工程数の削減につながる利点もある。会場では、表面が平滑で光沢感があり、意匠性の高い硬質塗装パネルのサンプルが展示されていた(写真2)。

写真2 キヤノンジャパン
循環経済に関する展示として、ホンダによる展示2件を紹介する。1つは、二輪車の外装パネルへのリサイクルポリプロピレンの実用化例である。市中廃材となったプラスチックについてサプライチェーンを把握し、規制化学物質を含有しない市中廃製品を選定した上で、バージン材を含めた配合設計により、新材同等のリサイクル樹脂とした。既に、「CB750」で15部品、「XL750」で17部品の外装部品に展開済みで、その一例がヘッドライトカバーである(写真3)。

写真3 ホンダ
もう1つは、ガラス繊維強化樹脂を対象とした、廉価で高純度な回収技術である。対象部品としてインテークマニホールドを想定している。ガラス繊維強化ポリアミド製の廃材フレークを溶媒に溶かし、固体異物であるガラス繊維を除去したうえで、溶媒を脱気して再度樹脂ペレット化する。使用した溶媒は95%程度再利用可能だという。
トヨタ車体は、「PAJICO(Plant Eco haJIcCO)」と名付けた工場内廃材の再活用コンセプトを展示していた。内外装部品の製造時に発生する端材などを有効活用する考え方で、回収した廃材をリサイクル樹脂ペレット化し、ラゲージトレイやワンボックス車のリアシート横パネルなどへの適用イメージを示していた(写真4)。

写真4 トヨタ車体
積水化学工業は、土木資材での実績を踏まえ、PCR材(使用済みプラスチックの再生材)を自動車部品へ展開する取り組みを紹介していた。バックドアインナーへの活用イメージを展示するとともに(写真5)、PCR材を淡色に調整できることもPRしていた。

写真5 積水化学工業
モノマテリアル化の提案としては、東レが座席用の「ポリエステルクッション」を出展していた。従来、座席のクッション材にはウレタンなど複数の素材が併用されることが多かったが、構成素材をポリエステル系に統一することで、使用後の分別工程を省略でき、リサイクル効率の向上につながるという。
易解体性に関する展示としては、トヨタ紡織が初出品の多機能ブロックシート「TBlocks(ティーブロックス)」を紹介していた。ヘッドレストやサイドサポート、バックパネル、クッションなど、座席を構成する部材をブロック状のユニットに分割できる構造とし、それぞれを個別に取り外せるようにすることで、解体・分別を容易にし、素材ごとのリサイクル性を高める狙いがある。
最後に、カネカのユニークな展示を紹介する。金属部材同士を接着する接着剤の易解体性を追求した開発品で、会場ではパネル展示のみで紹介されていた(写真6)。UV硬化型の接着剤をUV照射で短時間硬化させて金属部材同士を接着し、接着後に電気を流すことで容易に剥離できる点が特徴である。電圧をかけることで接着界面部の電位が変化し、接着力が低下する仕組みで、時間の経過とともに電位分布が解消されると、再び接着性が発現するという。実用化までの期間は短い見込みとのことである。

写真6 カネカ
今回の取材を通じて、循環経済、モノマテリアル、易解体性、植物由来材料への対応が、内外装部品メーカー各社にとって共通の開発テーマとなっていることがうかがえた。
次回は、プラスチック分野からは離れるが、話題となっている大型のアルミダイカスト、いわゆる「ギガキャスト」周辺についてのレポートを予定している。
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プロフィール

高原忠良(たかはら・ただよし)
2020 年にTech―T設立。
「現地現物」の精神で部品分解調査や、中国・東南アジア現地取材をもとに、⾃動⾞産業の将来動向まで多領域で情報発信中。
プラスチックや樹脂部品生産や材料の生産・開発に携わる自動車用途プラスチックの第一人者。
1980 年、山形大学理学部卒。2008 年、山形大学理工学研究科卒(工学博士)。
1980~1989 年、新日本無線(現:日清紡マイクロデバイス)。
1989~2012 年、トヨタ自動車。
2012~2018 年、サムスンSDIなどグローバル企業で勤務。
2017-2025年、埼玉工業大学 客員教授など産学両分野で活躍。
セミナー・メーカー支援・中国視察ツアー・日経クロステックへの寄稿など幅広く活躍中。ホームページでも各種調査情報を元に、記事や動画を多数掲載
https://www.tech-t.jp/

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
