2026.09.07技術解説

表面性状記号の読み方:機械製図道場(中級編 21)

Image

この記事では…

JIS 製図の幾何公差について一から解説。引き続き、幾何公差と関連して、表面粗さについて。今回は、表面性状記号の読み方を解説します。

(執筆:土橋美博//DOBASHI DESIGN LAB)

前回は、表面粗さに関する代表的なJIS規格として、JIS B 0031とJIS B 0601を取り上げました。JIS B 0031は「どのように図面へ指示するか」、JIS B 0601はRaやRzなど「表面性状をどのように評価するか」を定めた規格です。 

今回は、その中でも図面を読む上で最初に理解しておきたい「表面性状記号」について見ていきましょう。 

表面性状記号は何を意味しているのか 

機械図面を見ると、部品の表面にチェックマークのような記号が付いていることがあります。これが表面性状を指示するための基本的な図示記号です。 

一見すると単純な記号ですが、実は記号の形によって加工に対する要求が異なります。JIS B 0031では、大きく分けて次の3種類の図示記号が使用されます(表1、図1)。 

Image

表1 表面性状の記号の種類と意味

Image

図1 3種類の表面性状図示記号

ここで重要なのは、表面粗さの指示は、単に「Raの数値を指定するもの」ではないということです。 

例えば、ある面にRa 3.2が必要だったとします。その表面性状さえ満足すれば加工方法を問わないのであれば、基本図示記号を使用できます。 一 方、「この面は必ず切削加工して仕上げてほしい」という設計意図がある場合には、横線を加えた記号を使用します。逆に、鋳造や鍛造によって得られた面をそのまま残し、追加の切削加工を行ってほしくない場合には、丸を加えた記号を使用します。 

つまり、表面性状記号には、表面の品質だけでなく「その面をどのように作ってほしいのか」という設計者の意図も含まれているのです。 

「きれいにしたいからRaを小さくする」は正しい? 

設計初心者によく見られるのが、表面をきれいにしたいという理由だけで、必要以上に小さなRaを指定してしまうケースです。 

例えば、一般的な取付面に対してRa 0.8のような高い仕上げ精度を指定したとします。 加工すること自体は可能でも、場合によっては研削などの追加工程が必要となり、加工時間やコストが増加します。 

表面粗さは、小さければ小さいほど良いわけではありません。 摺動面であれば摩擦や摩耗、シール面であれば漏れ、はめあい面であれば組立性や接触状態など、 その面が果たす機能から必要な表面性状を決めることが基本です。 

設計者が「念のため」と厳しい数値を入れると、その一つの指示が加工工程や検査工程を増やす可能性があります。 

記号の周囲にはさまざまな情報を記入できる 

表面性状記号には、Raなどの粗さパラメータだけでなく、必要に応じて加工方法、筋目方向、削り代などの情報を追加できます。例えば、研削によって仕上げることを指定したり、加工によって生じる筋目の方向を指定したりすることができます。 
 

特にシール面や摺動面では、Raの値だけでは十分に機能を表現できないことがあります。同じRaであっても、加工方法や表面の筋目方向によって、摩擦や漏れなどの特性が変わる場合があるからです。そのため設計者には、「Raはいくつにするか」だけではなく、「その表面にどのような機能を持たせたいのか」を考えて指示することが求められます(図2、表2)。 

Image

図2 表面性状記号

Image

表2 表面性状に関する記入内容

表面性状記号は加工現場へのメッセージ 

図面は、設計者から加工担当者、検査担当者へ設計意図を伝えるための情報伝達手段です。 

表面性状記号もその1つです。 

「この面は切削してほしい」 

「この面は素材のまま残してよい」 

「この面はRa 1.6を満足してほしい」 

こうした要求を、文章ではなく図面上の共通ルールとして伝えるのが表面性状記号なのです。 

したがって、設計者は記号を覚えるだけではなく、「なぜこの記号を付けるのか」を考えることが大切です。必要以上に厳しい要求を入れればコストアップにつながり、反対に必要な指示がなければ、部品の機能を満足できない可能性があります。 

次回は、表面性状記号の周囲に記入する情報について、もう少し詳しく見ていきます。Raなどの粗さパラメータをどこに記入するのか、加工方法や筋目方向、削り代をどの位置に指示するのかを、図面例を交えながら整理していきましょう。 

Image

>>>>連載「機械製図道場」一覧 

プロフィール

Image



⁠土橋 美博(どばし・よしひろ
)/DOBASHI DESIGN LAB
⁠⁠3D CAD推進者。1964年生まれ。半導体組み立て関連装置企業とフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業にて3DCAD推進を行う。「日本のものづくりを再定義する」をテーマに有限会社スワニーCIOとして勤務。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。2026年7月、DOBASHIDESIGNLABを起業。

sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。