「関西 サステナブルマテリアル展」で見たバイオプラスチックのいろいろ(後編)

Image


この記事では…

2021年6月に開催した、材料・加工技術の総合展「第9回 関西 高機能素材Week」のうち、生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックなどがテーマの「第1回 関西 サステナブルマテリアル展」の出展内容を紹介する。(後編)

(執筆:松永弥生/ライター)

2021年6月23~25日の3日間、材料・加工技術の総合展である「第9回[関西]高機能素材Week」が開催された(主催:リード エグジビション ジャパン)。出展218社、来場者数1万6286人だった。今回は、その中の「第1回 関西 サステナブルマテリアル展」の出展ブースをレポートする。
>>前編はこちらから

パームヤシの房や籾殻を主原料とした「TEXa(テクサ)」

化学工業製品の輸入販売を行う巴工業のブースでは、Texchem Groupのバイオマスプラスチック「TEXa(テクサ)」が紹介された。

マレーシアを拠点に東南アジアや日本で事業を展開するTexchem Groupは、農業廃棄物を利用したバイオプラスチック「TEXa」の普及に務めているという。

TEXaは、パームヤシの房や籾殻を主原料としている。パーム油は世界で生産される植物油脂のトップであり、マレーシアは世界第2位のパーム油生産国である。日本でも食品メーカーの加工用油や化粧品、せっけんなどの用途で輸入されている。年間で、パーム房部分の年間廃棄量は800万トン、主食である米のもみ殻は約80万トンになるという。大量に出るパームヤシの房やもみ殻の処理は、マレーシア政府も解決すべき課題としている。

そうした社会的背景があり、TEXaには既存の農家や農園から輩出される農業廃棄物資源を活用。耐久性に優れ、プラスチック同様に成形が可能だという。

主原料をパームヤシにするか、もみ殻にするかで、TEXaの特性に違いが出る。パームヤシは繊維が長いので剛性は出るが、成形性はやや劣る。一方、もみ殻は成形性に優れているが、剛性を出すのが難しい。TEXaは全て51%のバイオマス率なので、ユーザーがオレフィン系樹脂と混ぜてバイオマス率を用途に合わせて調合するという。

現在は雑貨などの用途が多いが、食品衛生法対応のグレードもあるので、はしやスプーン、歯ブラシにも対応できる。日本でもエコに対する関心が高まってきており、問い合わせやトライアルの相談が増えているということだ。

Image

左:籾殻 右:パームヤシの房

Image

TEXaの特徴

粉末で保存可能な高機能ナノセルロース素材「S-CNFTM」

横河バイオフロンティアは高機能、ナノセルロース素材「S-CNF」を展示。セルロースナノファイバーは、植物の主成分であるセルロースを加工した繊維状のバイオマス素材だ。木材などから抽出し、繊維を細かくほぐして生産される。素材としての一般的な特徴は生産や廃棄に関する環境負荷が小さく、軽量で強度が高い、熱変形が小さい、酸素などのガスに対するバリア性(気体の遮断性)が高い点が挙げられる。

同社のS-CNFは、独自技術により開発した硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバーの粉末だ。S-CNF分子骨格中に導入された硫酸エステル基の強い静電反発力により、従来困難とされていたセルロースナノファイバー粉末化後の水分散を可能としたという。

S-CNF粉末に水分を与えると、セルロースナノファイバーの物理的性質を再現できる特徴がある。水分との配合比率を自由に変えられるため、用途に合わせて素材の性質を柔軟に変化させることが可能である。

粉末状にしたことで、ゲル状に比べて体積と重量が100分の1程度になり、輸送時や保管時のコスト抑制に大きく貢献する。また、保存期間も長くなり、防腐剤の添加も不要となった。

さらに、繊維をほぐす生産工程で必要なエネルギーが、一般的なセルロースナノファイバーに比べて抑えられ、製造コストの面でも大きな貢献が期待できるという。

同社は、第一段階としてフィルム、充填剤、機能添加剤など、化学・素材業界にサンプル提供を開始する。今後は商用生産にも着手し、化学・素材産業を中心とするメーカーに向けて、生産品の販売と、商用生産のライセンス販売のビジネス展開を目指す。また、S-CNFを使ったメーカーとの共同研究開発も検討しているという。

Image

水にS-CNF粉末を入れ、ゲル状に戻す実演

Image

S-CNF サンプル

業界に先駆けた「資源循環プロジェクト」

粘着加工を中核としたフィルムコーティングの総合メーカーである日榮新化は、資源循環による持続可能な社会の実現に向け「資源循環プロジェクト」を発表した。

ラベルの製造過程では、台紙に「剥離紙」という材料が不可欠である。剥離紙は一見すると紙であるが、表面にシリコンやPEといったプラスチック材料がコーティングがされており、

紙とプラスチックの分離ができないため、多くの場合、燃焼廃棄されている。

同社は、PETフィルムに剥離紙の機能を持たせた「リサイクル専用剥離フィルム」を開発。ラベルを使用するユーザーから「リサイクル専用剥離フィルム」を回収し、コーティングを除去してリサイクルする仕組みを構築した。

このプロジェクトに参画する事で、ユーザーの産業廃棄物、新たな木材・石油資源の仕様を大幅に低減する事が可能となる。

Image

エコマスラベル リサイクル剥離フィルム使用 印刷サンプル

「バイオマス」といってもいろいろ

バイオマスといってもさまざまな素材がある。現在、バイオマスプラスチックの原料は主にトウモロコシなどのデンプンだが、今回は、米やもみ殻、ヤシの房、卵殻とさまざまな原材料のバイオマスプラスチックが展示された。

ユーザーの中には「デンプンは食べ物」という認識を強く持つ人もおり、非可食の素材をエコとしてアピールしているブースもあった。ユーザーは今あるものとバイオプラスチックを比較する。今ある金型を使い、従来の物性を確保し、コストも押さえたい。バイオプラスチックの普及は、ユーザーのそうした要望にどこまで応えられるかに掛かっているだろう。

プロフィール

Image
松永弥生(まつなが・やよい)

関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。


sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。