2022年3月、東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド 2022」をレポートします。今回はものづくり編です。
日本ものづくりワールド2022 3月 レポート(後編)――ものづくり編

この記事では…
(執筆:小林由美)
前回は、設計・製造向けITソリューションについて紹介しました。今回は、機械要素技術展(M-Tech)について紹介します。
M-Techは、直動部品や軸受けを扱う機構部品メーカーや、部品加工などを行う中小製造業が中心となるエリアです。前回もお伝えしたとおり、大きな小間で出展していて、M-Techのエリアの大半を占めていたのが、自治体単位での中小製造業のグループ出展で、企業単独での出展数は控えめでした。また大手部品メーカーのブースでも小間数が小さめ、かつ出展数そのものも少ない傾向でした。
そのような状況でしたが、都内では「まん延防止等重点措置」が解除されたタイミングでもあり、人手自体はまずまずあった印象です。
プラスチック加工メーカーが自社の技術力をアピール
金属加工関連がかなりの比率を占めるM-Techですが、プラスチックにかかわるメーカーも出展。自社の技術力をアピールしていました。
中嶋製作所
大阪市が拠点である中嶋製作所は、1958年創業のプラスチックの精密切削に特化するメーカーです。同社の社長は「プラスチックは生き物や」と、プラスチックの精密切削の難しさについて日ごろから説いているそうです。プラスチックは柔らかく、かつ熱で柔らかくなります。その切削加工では、温度管理などに慎重に気を使いながら、μm単位での寸法精度での精密切削加工を行っています。

中嶋製作所による樹脂ねじの製作サンプル
同社では汎用プラスチックからスーパーエンプラまで、幅広いプラスチックに対応しています。この精密切削の技術は、半導体製造装置や医療機器などの分野で活躍しているそうです。
VELXY
VELXYは京都の部品加工メーカーです。「ベルクシーシステム」という提案からシステムによる生産管理、出荷・納品まで一貫してモノづくりをしていることが特色です。顧客は北海道から沖縄までおり、単品から量産品まで、月当たり7000~8000点の部品を納めているということです。

VELXYのアクリル製品の展示
今回は、同社が得意とする1つ、透明アクリルの加工品をブース前面に出して展示していました。切削痕を残さず透過度が高い状態に加工する技術は決して簡単ではなく、同社が長年培ってきたマシニング切削技術が生かされているということです。透明アクリルの切削技術は、理化学、半導体、光学、電子機器などの分野で引き合いがあるということです。
ケーエムケー
ケーエムケーは長野県の金型メーカーです。試作1点から、月産で30万個程度の中ロット生産まで対応しています。かつては自社に工場を持っていましたが、現在は、専門性高いパートナー企業らと協業してものづくりに取り組むファブレスになっているということです。商品開発段階から金型製作、表面処理、組み立てまで細やかに相談に乗っています。顧客は、医療、自動車、文具・おもちゃ関連など。

ケーエムケーが金型を手掛けた筐体(シー・エイチ・シー・システム社のCO2コントローラー)
今後は、従来の最終品メーカーだけではなく、ものづくりへ新規参入するスタートアップや個人事業主のサポートもしていきたいということでした。
加賀産業
名古屋市のメーカーである加賀産業もファブレス企業で、材料調達から品質保証までの一貫体制を構築しているとのことです。今回は、すぐに折りたためる防災用ヘルメット「オサメット」を前面に出して紹介していました。同製品は、2018年にはGood Design賞も受賞しています。

加賀産業の防災用ヘルメット「オサメット」
同製品は、子どもでも簡単に畳んだりかぶったりでき、かつ折りたたんだ時は、A4サイズ薄さ45mmになり収納時などでかさばらないことが特色です。今回も、通路に立ちながらヘルメットを折りたたむ様子を実演してました。小学校など教育機関で多数納入実績があるとのことで、Amazonや楽天などECサイトでも販売されています。
同社はヘルメットメーカーでありながら、航空・宇宙向け機器メーカーでもあります。1973年の創業当時は、ヘルメット製造から始まっていますが、その2年後に顧客の縁から航空・宇宙向け機器に参入し、今も主力事業となっているということでした。
これからの中小製造業、変化に対応できるしなやかさが重要か
今回紹介した中に、自社に工場を抱えないファブレスの企業が2社ありました。2社とも、かつては自社工場がありました。この数年の間で、ファブレスにシフトする中小製造業も出てきています。これだけ変化の激しい状況に、限られた資金とリソースで対応するための手段として有効なのかもしれません。
また加賀産業については、コロナの影響も受けながらも、比較的順調にビジネスをしているということでした。同社は、自社製品と受託のお仕事の両輪体制で、世の中や市場の状況に応じてうまくビジネスを切り盛りしてきたということです。同社は、コロナ需要を狙いに行く製品など、いろいろ自社製品を造っていました。
「自社製品という、自社が直接コントロールできるビジネスを持っているということは強い」とあらためて思いました。しかし、どの企業でも簡単に今すぐできるわけではないことです。業務が多忙の中で、人も少ない中で、それは非常に難しいことです。ましてはヒットさせるとなると、なかなかハードルが高いです。
企業を存続させていくためには、自社製品とまではいかなくとも、旬が来そうな分野にアンテナを張って目を向けて、そこに向けて応用できそうな既存技術なり、売り込み方法なりを模索を、常にしておくことは有効なのかもしれません。
すぐにできそうなことからでも、小さなことでも、構わないのだと思います。また、そうした取り組みをする企業のことを、次の時代を担う若い人の誰かが、ちゃんと見れてくれるのだと筆者は思います。
この経済的に振るわない今も、地方拠点の中小製造業も、業績をうまく伸ばしている中小製造業では、そうした動きが確かに見られており、最近取材でお会いした人材コンサルタントさんもそうだと言っていました。
憎き新型コロナが去ること、そして日本企業が育ててきた素晴らしいものづくり技術の世界に再び活気が戻ってくることを、切に願っています。
PlaBaseもそのお手伝いが微力ながらしていけたらと思います。

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