燕三条発の家電メーカーが挑む、「世界一おいしいコーヒー」を作るマシン:ツインバードに突撃取材!(1)

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この記事では…

家電メーカーツインバードに突撃取材! 同社のコーヒーメーカー開発の裏側に迫る。


⁠(執筆:おりも みか/製造業ライター)

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本格的なコーヒーが手軽に家で楽しめるコーヒーメーカー。家電メーカーツインバードが作り上げた全自動コーヒーメーカーは、発売されるや否やメディアでも大きく取り上げられ、大ヒット商品となった。金属加工をはじめとしたものづくりのまちである新潟県燕市。このまちで作られるコーヒーメーカーの秘密に迫る。
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全自動コーヒーメーカーの企画担当者である開発本部企画デザイン部部長代理 岡田剛氏に話を聞いた。

――ツインバードと言うと、洗練されたデザインと余計な機能のないシンプルな家電を多く作っているイメージです。高価格帯のコーヒーメーカーを開発したきっかけを教えてください。

岡田氏:ツインバードでは1988年頃からいわゆる一般的なペーパードリップのコーヒーメーカーを開発製造しています。ですが、やはりプロダクトアウトだけでは全然心に刺さらない。そこで社長から「世界一おいしいコーヒーメーカーはどうだ」と言われたのがきっかけです。最初は本気かどうかもわからなかったのですが(笑)。ちょうどその時、当社ではOEMでコーヒーメーカーを開発中でしたが、「自分だったらもっとこうしたい」という思いがありました。そこでプロジェクトがスタートしました。

――岡田氏自身にコーヒーへのこだわりがあったのですね。

岡田氏:私の父親も以前ツインバードで働いており、私が大学で一人暮らしをするときに持たされたのが自社製品のサイフォン式コーヒーメーカーでした。はじめは全く知識もなかったのですが、コーヒーショップでアルバイトをしていたこともあり、どんどんはまっていきました。

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現在も販売されている電気式のサイフォン式コーヒーメーカー


⁠――全自動コーヒーメーカーの開発はどのように進められたのでしょうか。

岡田氏:2018年に発売されるまで、開発期間としては3年ほどかかりました。まずどうすればおいしいコーヒーが作れるかというのをたくさんの書籍を読んで勉強しました。当初は操作系のボタンなどは全て上に配置していましたが、湯気は上に上がるので、基板系は下がいいだろうと。そのように2号機、3号機と試作を重ねましたが、家電メーカーなので機械は作れてもコーヒーは素人の集まりなので行き詰ってしまった。書籍だけでは肝心の味作りが理解できず、何をもって「おいしいコーヒー」と言うのかという壁にぶち当たってしまいました。
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岡田氏がバイブルと呼ぶ『田口護の珈琲大全』(田口護著NHK出版)にはたくさんの付せんが貼られている


⁠――そこで運命的な出会いがあったと。

岡田氏:私たちがバイブルにしていた書物の著者であり、コーヒー業界のレジェンドである田口護先生にお会いできるチャンスを得ました。門前払い覚悟で試作機を持ってお伺いして、熱量を持って疑問や悩みをお伝えしました。すると田口先生が一言、「うれしいね」と言ってくださったんです。「このコーヒーマシンにはぼくの思想がしっかり入っている」と。そうして一緒にやろうということになりました。

――おいしいコーヒーというのは、どういうものなのでしょうか。

岡田氏:田口先生が最初におっしゃったのは、「コーヒーは味噌汁に似ている」。味噌汁で大事なのは出汁です。コーヒーの出汁にあたる雑味のないまろやかさを出すためには正しい作法があるということを教えていただきました。味自体は個人の嗜好なので答えはありませんが、コーヒーをたてる作法である3つのポイント、豆の粒度をしっかり揃えて挽くこと、抽出する温度は83度、そして蒸らしから始まる適切なドリップを守ることが大事です。試作しては先生にカッピング評価をしてもらい、何度も繰り返していくことでようやく匠の暗黙知を実装することに成功しました。その際、先生から『本当によくやったね』という言葉をいただき、ハイタッチをしたことが忘れられない思い出です。

――匠の技術を家電で再現する上で、技術的な課題はどのようにクリアされたのでしょうか。

岡田氏:豆の粒度を揃えるために、非常に低速で熱負荷を与えないようにするのですが、本社がある燕三条地域の金属加工技術を用い、協力工場にも尽力してもらい完成しました。量産性も考えて現在の形状になっています。

一般の方が使う家電として、お手入れのしやすさを考慮して、ミルを脱着式にしていますが、そうすると強度や剛性で不利になります。3Dプリンターで試作して、プリンターでは作れない剛性のあるパーツも織り交ぜて試作品を作り上げ、検証評価を繰り返しました。

形状の再現性には課題が多く苦労しましたが、樹脂選定については量産性も考慮しつつ、開発チームと協力して詰めていきましたね。

仕様がまとまりつつあったところで最後に課題となったのが静電気です。ミルで豆を挽いて落とす際、どうしても静電気で豆が散ってしまう。それを防ぐために、導電性樹脂を練りこんだドリッパーと除電レバーによって静電気を逃がしています。

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⁠――特にこだわった部分を教えてください。

岡田氏:一般的な全自動コーヒーメーカーは豆を入れると中で何が行われているかが見えないタイプが多いですが、私たちは敢えてそれぞれの工程を目で確認して、しっかり味わえるデザインにまとめています。時間があるときは本体のミル機能だけを使用して豆を挽き、豆の膨らみを楽しみながらハンドドリップできるというコーヒーの醍醐味も製品機能として持たせています。

全自動と言いながら、実は豆の種類や挽き目、豆の量や水の量などを調整できます。ユーザーが介在する余地があることで、『自分が作ったコーヒーがおいしい』という体験をしていただけるとうれしいですよね。それがこのコーヒーメーカーの特徴なのではないかと思います。
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⁠次回は、コーヒーメーカーを開発する上でどのように社内を巻き込んでいったのか、そして周囲や消費者の反応について話を聞く。

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新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。⁠Twitter ID:@jilljean0506