2026.10.14技術解説

表面性状記号の記入の仕方、どうしたらいい?:機械製図道場(中級編 22)

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⁠この記事では…

JIS 製図の幾何公差について一から解説。引き続き、幾何公差と関連して、表面粗さについて。今回は、表面性状記号の記入の仕方について解説します。

(執筆:土橋美博//DOBASHI DESIGN LAB)

前回は、表面性状を表す3種類の図示記号について解説しました。表面性状記号は、単に「Ra 3.2」などの表面粗さを指示するためだけのものではありません。記号の周囲には、粗さパラメータのほか、加工方法、筋目方向、削り代など、表面をどのように仕上げてほしいのかを示す情報を記入することができます。

今回は、「何を、どこに書くのか」という視点から整理してみましょう。

表面性状記号の周囲には何を書くのか

表面性状記号の周囲には、それぞれの情報を記入する位置が決められています。

代表的なものとして、次のような情報があります。

  • Ra、Rzなどの表面性状パラメータとその値
  • 旋削、フライス加工、研削などの加工方法
  • 加工によって生じる筋目方向
  • 加工前に残しておく削り代

これらは、好きな位置に記入するものではありません。図面を読む人によって解釈が変わらないよう、一定のルールに従って配置します。筆者自身の設計実務を振り返ってみると、主に使用してきたのはRa、Rzなどの表面性状パラメータと、研削などの加工方法の指示でした。

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図1 SOLIDWORKSによる表面性状記号の記入例(筆者作成)

まず設計者が最もよく使うのが、Raなどの表面性状パラメータです。

例えば「Ra 3.2」と指示されていれば、その面の算術平均粗さRaに対して3.2μmという要求を与えていることになります。

ここで注意したいのは、単に「3.2」と数値だけを見るのではなく、Raなのか、Rzなのかまで含めて確認することです。パラメータが違えば、同じ表面を測定しても評価している内容は異なります。

加工方法まで指定する必要はある?

表面性状を満足すれば、どのような加工方法でもよい場合、設計者が加工方法まで指定する必要はありません。一方、部品の機能上、加工方法そのものに意味がある場合があります。

例えば、「研削によって仕上げたい」という設計要求がある場合には、加工方法として図1のように「研削」などを指示します。加工方法の指定も設計要求の一つであり、必要な場合に指示するという考え方が大切です。

なお、加工方法については、JIS B 0122に加工方法記号が規定されています。例えば、旋削は「L」、フライス削りは「M」、研削は「G」と表します。表1には、機械加工で一般的に用いられるものから代表例を示しました。加工方法はこの記号を使用することもできます。

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表1 加工方法の記号の例

「筋目方向」はなぜ必要なのか

切削や研削を行った表面をよく観察すると、加工による細かな筋が見えることがあります。これを加工目、あるいは筋目などと呼びます。この筋目の方向も、表面性状記号によって指示できます。

例えば摺動する面を考えてみましょう。部品が移動する方向に対して筋目がどの方向に形成されているかによって、摩擦や摩耗の状態が変化することがあります。また、シール面では筋目が漏れにつながる経路を作ってしまう場合もあります。

つまり、

「Raが同じなら、同じ表面である」とは限らない

ということです。

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図2 筋目方向の記号とその意味(筆者作成)

ここでいう「投影面」とは、部品の形状を投影する先の平面のことです。筋目方向の「平行」「直角」は、表面性状記号を記入した図の投影面に対して、筋目が平行か直角かを表しています。

表面粗さの数値だけでは表現できない機能上の要求がある場合に、筋目方向の指示が重要になります。

削り代とは?

表面性状記号には、削り代を指示することもできます。削り代とは、最終的な寸法や表面性状を得るために、後の機械加工で除去することを前提として素材に設けておく材料の余裕です。鋳造品や鍛造品などを機械加工によって仕上げる場合に用いられます。

記号の位置には設計意図がある

表面性状記号の周囲には、さまざまな情報を書くことができます。

しかし、大切なのはすべての欄を埋めることではありません。

「この面にはどのような機能が必要なのか」

「その機能を実現するために、加工担当者へ何を伝える必要があるのか」

という順番で考えることが重要です。

Raだけで十分ならRaだけを指示する。加工方法に意味があるなら加工方法を加える。筋目方向が機能に影響するなら、その方向も指定する。また、後加工のために材料を残しておく必要があるなら、削り代を指示する。表面性状記号は、小さな記号の中に設計者の要求をまとめて伝えるためのものです。図面に記号を書くことを目的にするのではなく、その記号によって何を伝えたいのかを考えることが、正しい表面性状指示への第一歩です。

次回は、表面粗さをどのように決めればよいのか、部品の機能と加工方法の関係から考えてみましょう。

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土橋 美博(どばし・よしひろ)/DOBASHI DESIGN LAB 代表/Founder&Principal thumbnail
土橋 美博(どばし・よしひろ)/DOBASHI DESIGN LAB 代表/Founder&Principal

⁠半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカー、製品設計会社を経て独立し、開発/設計/製造DXを現場経験で支援するDOBASHI DESIGN LABを創立。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。