大自然の力で、プラスチックに係る資源循環を促進!:九大 北岡氏に聞くCNF事情(2)

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われわれが今後、プラスチックとどのようにかかわっていくべきか、バイオマスマテリアルを専門に研究する九州大学 大学院農学研究院 北岡卓也教授に話を聞いた。今回は、カーボンニュートラルやネガティブエミッションなどについて解説する。

(執筆:松永弥生/ライター)

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人間が育てることができる再生産可能な資源

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九州大学 大学院農学研究院 教授 北岡卓也氏

サーキューラエコノミー(循環型経済)の実現は世界共通の課題だが「プラスチックだけが悪者のように言われているのは、違和を感じる」と北岡氏は言う。しかし、身近にプラスチック製品が多いことや、目に見える形で海洋に流れてしまい海洋生物を殺しているなど問題点がキャッチーに拡散されたため、プラスチックは悪者になってしまった。

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サーキューラエコノミー(循環型経済)の概念図(出所:「循環経済ビジョン2020(概要)」経産省)https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200522004/20200522004-1.pdf

レジ袋は有料化され、2022年4月1日からはプラ新法によりスーパーやレストランなどの食品販売店は、客へ無償提供するプラ製スプーンなどの使用量削減への取り組みが求められている。

そうはいっても、われわれの生活からプラスチック製品を完全に排除することはできないだろう。そこで、環境に優しい素材の研究開発が盛んに行われている。今後、プラスチックがバイオマス素材に変わり、使用後は自然に戻るようになれば、海洋汚染の問題も解決できると期待されるからだ。

そうしたバイオマス素材の中でも注目を集めているのが、木から抽出されるCNF(セルロースナノファイバー)だ。

セルロースは全ての植物が持っているが、「樹木は多年生でCO2の固定期間が長く、低炭素化につながる」「人の食べ物ではない」など、人間が育てることができる再生産可能な資源として、樹木には優れた特徴がある。

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樹木からセルロース分子鎖までの階層構造(出所:「脱炭素・循環経済の実現に向けたセルロースナノファイバー利活用ガイドライン」環境省)https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/cnf/guideline_main.pdf

カーボンニュートラルの先にある「ネガティブエミッション」とは

CNFの大きな特徴は、鋼鉄の5倍の強度で5分の1の質量という点だ。バイオマスは生育環境などにより性能が変動するが、CNFはナノレベルのサイズで均一化されている。熱を加えても大きさや形が変わらないため、電子部品の基盤材料や光学材料、自動車部材の軽量化など工業製品として使用できると期待されている。100%植物由来であるため、生分解性に優れる点も有意義だ。

「石油から作るプラスチックと異なり、人が合成できないという点も重要です。人が成し得ない奇跡を植物が日々行っていることに、感動を覚えます」と北岡氏は言う。

今、2050年カーボンニュートラルに向けて、国をあげて取り組んでいる。廃棄物や汚染などが発生しない製品・サービスの設計を行い、3R(Reduce:発生抑制、Reuse:再使用、Recycle:再資源化)+Renewable(再生可能性原則)を実現するサーキュラーエコノミーも話題だ。

北岡氏は「今後は“ネガティブエミッション”と“エコサーキュラーエコノミー”がキーワードになる」と言う。

エミッションは排出という意味だ。吸収と排出の量が等しければ、ゼロエミッションになる。カーボンニュートラルは、排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計がゼロになる状態だ。つまり、CO2は増えないが減りもしない。大気中のCO2を減らすためには、排出量より吸収量・除去量が多いネガティブエミッションにしなければならない。

だが、それは言うほど簡単ではない。

大自然の力を借りる「エコサーキュラーエコノミー」

前述のように、CNFの原料は木だ。

古来より陸上の木は朽ちれば海に流れ出て海洋を漂い、深海に沈み微生物のエサとなってきた。海底で生分解されれば、そこでCO2の放出が起きるが、海洋深層水の流れが表海面に入れ替わるには500~1000年かかると言われている。

つまり、深海で発生したCO2が海上に出てくるまでに長い時間がかかるため、大気中からCO2を除去するネガティブエミッションになるわけだ。

CNFで作った材料が、最終的に環境中に放出しても微生物によって分解されるのであれば、仮に海洋中に放出されても、海底に沈んで微生物によって分解される。「木は人が誕生するよりも前から海洋に放出され続けているが、生態系に組み込まれており、問題になっていない」と北岡氏は言う。

このように、自然の力を借りて循環するのが「エコサーキュラーエコノミー」の考え方だ。

近い将来には、カーボンニュートラルからネガティブエミッションに意識が移るだろう。その時、生態系材料科学が発展し、サーキュラーエコノミーとエコサーキュラーエコノミーを併用することになるだろうと、北岡氏は予測している。

次回に続く

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松永弥生(まつなが・やよい)

⁠関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。