家電メーカーツインバードに突撃取材! 同社のコーヒーメーカー開発の裏側に迫る。
全自動コーヒーマシンを作る、燕のプラスチック成形工場に潜入だ!:ツインバード突撃取材(3)

この記事では…
(執筆:おりも みか/製造業ライター)
第1回、2回と開発者へ開発の裏側を聞いた。全自動コーヒーメーカーは日本製だ。今回は実際に部品を製造している協力メーカー、自社工場に突撃し、製品を製造する上での思いや裏話を取材した。
ツインバード本社から車で数分。全自動コーヒーメーカーのプラスチック部品を製造している株式会社エンテックは、新潟県燕市のプラスチック成形メーカーだ。自社ブランドの業務用食器の製造のほか、OEMでもプラスチック成形を行っている。

エンテックの代表取締役である関藤紘希氏に話を聞いた。
――どのようなツインバード製品に関わっているのですか?
関藤氏:全自動コーヒーメーカーのホッパー部の成形品を製造しているほか、コロナの時期は新型コロナウイルス用ワクチン運搬庫のお仕事を頂いていました。
――コーヒーメーカーは開発から参加されたのですか?
関藤氏:当社が関わったのは、開発がかなり進んでからですね。ユーザーから見えて、実際に取り外しもするパーツなので、ランナーカットや外観にはとても気を配っています。試作トライから始まって量産と平行しながら、基準が固まって順調に流れるまでに1年ほどはかかったと思います。形状が複雑なので金型に食いついてしまって、金型をバラさないと成形品を取り出せず困ってしまったこともありました。


――成形する上で特に気を付けていることはありますか?
関藤氏:やはり調理家電の部品なので、安心安全の部品や外観には気を付けています。透明パーツなので樹脂の焦げなどの異物が混入していないかの検品はしっかり行っています。ニッパーでゲートをカットしていますが、曲面なので難しい。自動ゲートカットでは傷がついてしまうので、熟練の作業員が1つ1つ手でゲートを処理しています。ふたの部分もサブマリンゲートで難しく、成形には非常に気を使います。当社は主に食器を成形しているので、こうした外観の管理を得意としています。

――部品を1つ1つ袋に入れて通い箱に納めていますね。
関藤氏:はい。傷が付かないようにこのようにして納品しています。作業員の方も指紋や手の油脂をつけないように気をつけながら作業するなど、丁寧に作業してくれています。

――樹脂材料は自社で手配していますか?
関藤氏:この部品はASですが、色のブレが出ないように着色ペレットを使用している、この製品専用の材料となっています。材料の管理についても信頼して頂いています。樹脂選定に関しては当社から提案することもあります。異物などの成形不良品は粉砕して、毎日朝に成形機を清掃する際にパージ材として用いるなど、部材をムダにしないよう心がけています。
――燕三条でのものづくりはいかがですか?
関藤氏:燕三条は「ものづくりのまち」で、町の中で材料から金型からなんでも揃ってしまうほどです。当社でも取引先は近隣が多く、遠方への出張はほとんどありません。ツインバードさんからの注文はロット数も多めですし、安定的に発注いただいているのでとても助かります。これからも燕三条のブランドを世界に発信していただき、そのお手伝いをさせていただきたいですね。
コーヒーメーカーの生産について
ツインバード本社敷地内にある組立工場では、全自動コーヒーメーカーの組立をセル生産方式で行っている。ツインバード生産本部製造部部長代理 中條英仁氏に話を聞いた。
――自社組立工場では、セル生産方式で全自動コーヒーメーカーの組立を行っていますが、これはどれくらい前からやっているのですか?
中條氏:セル生産に切り替えたのは2年ほど前です。やはり「ムダを減らしたい」ということでセル生産方式を取り入れました。切替え時は作業員の方も大変だったと思うのですが、責任感を持って協力してくれ、ここまでできるようになりました。

トルク値の異なる電動ドライバーを数本配備し、場所によって使い分けている
――現在のライン構成はどのようになっていますか?
中條氏:内部のミルユニットと、検査含めた完成品の2グループに分けたインライン方式になっています。グループを増やすことで生産量増加にも対応可能です。一人当たり持ち工数は90~120秒ほどに設定しており、工程にもよりますが多い人は30アイテムほどあります。
――かなり多いという印象ですが、作業指導はどのように行っていますか?
中條氏:作業手順書を掲示しています。たとえ同じ作業を担当する場合でも、作業前には毎日必ず手順書を確認しています。担当の急なお休みなどにも対応できるよう多能工化を進めており、専任ではなくどの作業もできるように進めています。
――作業効率を上げるためにどのようなことを工夫していますか。
中條氏:ラインバランスの調整に迷ったら、思い切って人を減らして持ち工程を増やします。慣れてくると意外と問題なくできるということもあるので、まずはやってみようと。隣の人が早いと次の人も自然と早くなっていくものです。また、持ち工程が多いので、自分たちでうまくバランスを取りながら作業をできるのもメリットです。治具も自社で用意して、作業がしやすいように作業台の高さなども調節しています。

――作業員の方は全員手袋を着用しているのですね。
中條氏:やはり調理家電ですので、手袋の着用など衛生面に最大限配慮した環境の元、工場内の環境にも気を配っています。
――不良対策はどのように行っていますか?
中條氏:ラインでは通電検査を含めた検査工程を全数行っていますが、加えて検査部門でも出荷前に抜き取り検査を行っています。お客様のもとへ不良品が届いてしまうことがないよう気を付けています。やはり“ツインバードの顔”とも言える商品なので、特に品質には気を使います。
――生産が長く続いてくると、課題なども見えてくるのでは?
中條氏:組立上で問題になるところや改善点は開発にもフィードバックして、より良い製品になるよう品質を作りこんでいけたらと思います。それ以外の部分で、例えば当社は自動倉庫なのですが、これまでパレットの載せ替えが発生していました。「これはムダだろう」と言うことで、今は工場内でも倉庫に対応したパレットを使っています。こうした小さな改善の積み重ねで貢献していけたらと思っています。

「TWINBIRDの顔」として
今やツインバードの看板商品となった全自動コーヒーメーカーは、近隣の協力メーカーや組立部門の改善の積み重ね、そして細やかな気遣いによって製造されている。今回取材において、この全自動コーヒーメーカーに関わる人がみな「TWINBIRDの顔である」というプライドと愛着を持ちながら、開発や製造に関わっていることが印象的であった。大ヒット製品となった秘訣はこういうところにあるのかもしれない。
新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。Twitter ID:@jilljean0506

